「ベア・アンブレラ」という言葉を知っていますか?


“クマは森の傘”という意味です。
クマのすめる森には、たくさんの生きものたちが暮らしています。
豊かな水源の森の水は、田畑や海にもつながっています。
ツキノワグマは、森にひっそりと暮らしている“森の守り人”。
クマを守ることで、豊かな森も私たち人間の生活も守られています。


あゆみ 

 

  1992年1月、兵庫県尼崎市立武庫東中学校の生徒たちは、兵庫県のツキノワグマが絶滅寸前あと60頭という新聞記事を読んで衝撃を受けました。なんとか絶滅を止めてやりたいという優しい気持ちから、なぜ絶滅するのかみんなで調べました。そして、クマたちの棲み処だった広大な奥山自然林が、戦後の林野庁の拡大造林政策によって、餌のないスギやヒノキの針葉樹の単一人工林になってしまっていることを知りました。クマたちが餌を求めて山から出て来るようになると、地元の皆さんも困ります。行政は、有害獣というレッテルを張って駆除し続けていました。 


胸の痛みに耐えかねた生徒たちは、捕殺を禁止し、奥山にもう一度野生動物たちが棲める自然林を再生してやってほしいという署名を集め、県庁や環境省に持っていきました。当時の貝原俊民 兵庫県知事にも直訴しました。植樹祭の時、来県された天皇皇后両陛下にも手紙を届けました。 その結果、ついに重い扉が開き、1994年5月、当時の環境庁長官により、「兵庫県ツキノワグマ絶滅の恐れにつき狩猟禁止」が発表されたのです。絶滅を止めるには、有害駆除も止めねばなりません。そのためには、奥山人工林をもう一度餌がいっぱいの広葉樹林に戻す必要があります。国、地方行政、学者、団体などに片っ端から奥山の広葉樹林化をお願いしに行きましたが、動いてくれるところはゼロでした。 


1997年、大学生になった生徒たちは、調査や研究だけに終わらず、実践活動により森や野生動物の保全を行う、欧米型の市民に支えられた大自然保護団体が日本にも必要だと考え、日本熊森協会を結成しました。2020年現在、兵庫県の発表によると、令和元年度の兵庫県のツキノワグマの生息推定数の中央値は 722 頭にまで回復したそうです。しかし、奥山開発は止まらず、奥山人工林の広葉樹林化も進まず、近年はナラ枯れが進んで実のなる木が一気に総枯れになるなど、森や野生動物がおかれている現状はますます厳しくなってきました。餌を求めて山から出てきたクマたちは、現在、例外県以外は皆殺しにされています。私たちは活動の輪を一気に大きくしていく必要に迫られています。